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書評「同一労働同一賃金で、給料の上がる人・下がる人 あなたの収入はどうなるか?」⑥

2018/05/16

「同一労働同一賃金で、給料の上がる人・下がる人 あなたの収入はどうなるか?」

著者 山口俊一

【書評】

最近、ニュースや新聞記事などいたるところで「働き方改革」という言葉を目にするようになりました。
何となく現状がよい方向に向かうようなイメージでとらえ、身近なことと感じている人も多いのではないでしょうか。
実際、ここ数年のうちに働き方をはじめとして、会社の在り方が大きく変わります。
しかし、実際にどのようなことが起こり、結果的にどうなるのかをどれだけの人々が把握できているのでしょうか。
二〇一六年九月、安倍内閣は一億総活躍社会の実現に向けて、内閣官房に「働き方改革実現推進室」を設け、働き方改革への取り組みを提唱しました。
具体的には、長時間労働の改善、非正規社員(派遣社員、パート・アルバイト)と正社員の格差是正、高齢者の就労促進の実現を目指すとうたっています。
たとえば、「働き方改革」の目玉として進めている、契約社員やパートなど非正規社員と正社員の格差是正について、同一労働同一賃金を取り入れるとはどういうことなのでしょう。
同一労働同一賃金とは同じような仕事内容であれば、みな同じ賃金にするということです。
欧米社会では職種ごとの賃金相場が形成されていて、長い年月をかけて、それ相応のシステムが形づくられてきました。
日本でもバブル崩壊以降、日本型成果主義システムが導入されて大きく変わったかのように見えましたが、若手より中高年、女性より男性、独身者より家族持ち、非正規社員より正社員の方が給料水準は高いというように根本のところではこれまでと変わりありませんでした。
このような欧米型のやり方が導入されたとき、日本ならではの問題が生じます。
そのため、状況を把握できていないがために会社として、個人として、取り残されてしまう可能性もあります。
著者の山口俊一は人事コンサルタントとして二五年以上もの経験をもち、約五〇〇社の企業の人事・賃金制度改革を支援してきました。
また、人事戦略研究所を立ち上げて、一部上場企業から中堅・中小企業にいたるまで、あらゆる業種・業態の人事制度改革コンサルティングを手掛けています。
本書では、著者の長年にわたる人事コンサルタントとしての知識・経験を踏まえて、同一労働同一賃金によって企業の人事・賃金システムはどのように変わるのか、正社員・非正規社員など、雇用形態による待遇にどのような変化が起きるか、個人としてどのような対策をとるべきなのかについて丁寧に紐解いていきます。
まず最初の章では同一労働同一賃金とはどういうことなのかを説明します。
この考え方は古くからあるものとして、国際労働基準(ILO)の基本思想が引用されています。
また、日本でも男女雇用機会均等法に加え、パートタイム労働法改正で、職務内容が正社員と同一、人材活用の仕組みが正社員と同一であれば差別的取り扱いが禁止されています。
ただ、現在、政府がこのテーマで解決しようとしているのは、正社員と非正規社員との待遇格差是正のみ。
しかし、それだけでは不十分だと著者は言います。
職場ローテーションによる総合職、ゼネラリストを育成しようとすることが日本の企業の特徴の一つです。
そのため、「人に対して給与が決まってきた」日本では職種別賃金導入が難しいからです
次の章からはそれぞれの雇用形態における現状の把握、課題、対応策など、具体的な例を引いて論じられています。
まずは非正規社員について、現在、働く人の半数以上が限定社員だそうです。
そして、政府の真の狙いは非正規社員を限定社員化することです。
そのような状況のなかで、企業側が勤務時間や賃金、雇用形態のコントロールによっていかなる賃金対策をとっているのかを知ることで、労働者としてどのような働き方を選択していくべきなのかが見えてきます。
そして正社員については、成果主義的な考え方は浸透しつつあるけれど、それでも年功序列が生きつづけていることが問題であるといいます。
公務員は処遇面での男女格差がないこと、小売業や飲食業では割を食うため管理職がうとまれること、女性の給与水準が男性の七割であること、日本では給与に関しては企業間格差が顕著であることなどが述べられています。
正社員といえども、多角的に検討してみると必ずしも望むような働き方・賃金が得られるとは限らないのです。
そして、経営者・役員はどうなるのか。
結局、「働き方改革」とは長時間労働規制でも、管理職、経営者、フリーランス、公立学校の教師などは規制の対象外です。
長時間労働是正においても、労働者個人がそれぞれ収入を維持する、減らさない方法を探っていくことが重要なのです。
退職金の導入割合も金額も低下しているので、兼業や副業も視野にいれつつ、確定拠出年金やNISAを活用して老後の備えをすべきだともいいます。
第七章では業界別の人事環境と方向性が述べられています。
製造業、卸売業、小売業、IT業、建設業、物流業、それぞれデータをもとに今後何が起こるのかを予測します。
同一労働同一賃金の導入による影響の有無、職種による賃金の上昇・下降傾向、それぞれの業界の特徴を理解することは、生涯賃金なども含めた自分の人生計画を立てる際に役立つにちがいありません。
最後の章ではこれまで理解してきたことを踏まえて、結局のところ、何をすればよいのかという対策に触れています。
パート社員、新卒者、若手社員・ミドル社員、五十代以降の社員、女性社員、経営者、それぞれ雇用形態や属性により身の振り方はさまざまです。
上場企業であれば『会社四季報』(東洋経済新報社)で、そうでなければ自社ホームページなどで財務状況を調べ、その企業の経営状態を把握しておくこと、給与水準をできるだけ正確につかむことが大切だと説いています。
同一労働同一賃金を実現するには課題が山積みですが、「正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇の確保」が目的ならば、避けては通れない要素だともいいます。
最後に、あなたの収入はどうなるかという問いへの解答として挙げられているキーワードをここに並べてみましょう。
 
①中高年男性社員の給料は下がる
②パート・アルバイトの給料は上がる
③契約社員や派遣社員は(限定)正社員化による給料増をねらう
④若手社員の給料は微増か横ばい
⑤管理職の給料は本来上がるべきだが、実際には横ばい
⑥管理職を目指す女性の給料は上がる
⑦専業主婦の給料は増えるが、家族手当は縮小される
⑧出向者の給料は当面変わらないが、中期的には下がる可能性あり
⑨長時間労働者は残業が減る分、収入が下がる
⑩フリーランスは引き続き低収入(副業としてなら収入増に)
⑪シニア社員、六〇歳以降の総収入は上がる(副業、企業でさらにアップも)
⑫退職金は減っていくので、自ら将来準備を
⑬経営者の報酬は、大企業を中心に上がっていく。
⑭社外取締役の報酬は、上がっていく(特に女性登用が顕著)
 
本書には「同一労働同一賃金」とはどういうものなのか、簡潔にまとめられています。
これからの時代、他人に自らの人生をゆだねるのではなく、納得のいく道を進んでいきたいものです。
そのためには、自分の働く現場の状況を正しく知ること、そして正しい選択をすることが大切なのです。