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「定年後の給与水準引き下げ」に対する判例2
2019/07/18
九州惣菜、定年再雇用後の賃金75%減は「違法」 <裁判の概要> <判決のポイント> ・定年前と再雇用後の労働条件に「不合理な相違が生じることは許されない」と指摘し、「生活への影響が軽視できないほどで高年齢者雇用安定法の趣旨に反し、違法」と訴えを認めた。 ・その後、2018年3月1日に最高裁が、上告の不受理を決定して、上記判決が確定した。 |
この判例は、北九州市の食品会社、九州惣菜の事案です。ただし、この判決の根拠になった法律は、高年齢者雇用安定法です。
長澤運輸裁判では、定年退職者の賃金を2割減らすこと(定年前の8割を支給すること)は問題ない、と認定しました。ただ、人事担当者としては、賃金を減額できる下限を知りたいと思うでしょう。この判例では、その水準の目安が示されました。
この訴訟では、定年を迎える経理の社員が、会社側から定年再雇用の条件として定年前の賃金の25%の支給(つまり賃金75%減)を提示され、それを不服として起こされました。
福岡高裁は、賃金25%支給(75%減)は不法行為であると判示し、最高裁もそれを支持して判決が確定しました。
具体的には、定年前の月給33.5万円に対して、再雇用の条件として、時給900円、勤務時間実働6時間/日、週3~4日勤務を提示した、ということです。再雇用後の職務内容は異なるため、同一労働ではないケースです。
福岡高裁は「定年前と再雇用後の労働条件に不合理な差異が生じている」「生活への影響が軽視できない」と認定しました。つまり「75%減は下げ過ぎだ」「生活できない」と認めたわけです。
この事案は、同一労働でなかったとしても、定年再雇用者の賃金を「下げすぎることは許されない」と判断しています。
75%減と聞くと極端なケースに感じますが、定年再雇用後はパート契約として、他のパート社員と同水準の時給にしている会社は、少なからず存在します。
「この程度のことは、どの会社でも行っている」と感じている人事担当者もいるかもしれません。しかしこの判決によって、定年前に責任ある仕事を担っていた正社員を、定年再雇用時にパートにして、賃金を大幅カットすることは許されない、というルールが確定しそうです。