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同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは、「同じ仕事内容であれば、同じ賃金にしなさい」
という考え方です。

主要先進国ではこの同一労働同一賃金の考え方が当然の概念として
認識されており、欧米ではこの原則に沿うかたちで、
職種ごとの給与相場や給与制度が定着しています。
日本においても、働き方改革関連法の成立を受け、大企業は2020年4月から、
中小企業は2021年4月から導入されることになりました。

今後は、正社員と非正規社員の待遇差是正の動きが活発化することになります。
本WEBサイトでは、日本における同一労働同一賃金の考え方、
ガイドライン案の解説から
日本の中堅・中小企業が「同一労働同一賃金」にどのように対応し、
取り組んでいくべきかを考える上で参考となる様々な情報を発信しています。

山口 俊一

人事部門必見! 同一労働同一賃金ガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)への対応策

2018年12月28日、「同一労働同一賃金ガイドライン」(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)が、交付・公示されました。2016年12月に発表された「同一労働同一賃金ガイドライン案」に一部修正・加筆し、正式なガイドラインとなっています。 「基本的な考え方」として、以下のように表現されています。…続きを読む

同一労働同一賃金に関連した最近の裁判例

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厚生労働省ガイドライン

労働時報の人事ポータル ジンジュール

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同一労働同一賃金に関連した主な法律の改正点(2019年12月現在)

同一労働同一賃金に関連した主な法律の改正点は下記の通りです。

  改正前 改正後 施行時期
労働基準法
  • 第3条 均等待遇

    国籍、信条、社会的身分を理由とした差別を禁止

  • 第4条 男女同一賃金の原則

    女性を理由とした賃金の差別的取扱いを禁止

※現行通り -
労働契約法
  • 第21条 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

※パートタイム労働法へ統合 -
パートタイム労働法

名称:短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律

  • 第8条 短時間労働者の待遇の原則

    均等待遇(業務の内容、責任の程度、配置の変更範囲が同じ場合は差別的取扱いを禁止)

  • 第9条 差別的取扱いの禁止

    短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いを禁止

  • 第10条 賃金

    職務内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案して賃金を決定

  • 第14条 内容説明の義務

    第8条の均等待遇に関する内容説明の義務は対象外

名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善に関する法律

  • 第8条 不合理な待遇の禁止

    均等+均衡待遇(業務の内容、責任の程度、配置の変更の範囲、その他の事情の相違を考慮して不合理な待遇差を禁止)

  • 第9条 差別的取扱いの禁止

    短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与、その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いを禁止

  • 第10条 賃金

    職務内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を勘案して賃金を決定

  • 第14条 内容説明の義務

    第8条の均等+均衡待遇に関する説明義務を追記

    説明を求めた労働者の不利益な取り扱いを禁止

2020年4月1日
※中小企業における適用は2021年4月1日
派遣労働者法
  • 第30条 均衡を考慮した待遇の確保

    職務内容、職務の成果、意欲、能力、もしくは経験等を勘案して賃金を決定

  • 第30条 不合理な待遇の禁止等

    均等+均衡待遇(職務内容、配置の変更の範囲その他の事情の相違を考慮して不合理な待遇差を禁止)

    派遣労働者であることを理由として、基本給、賞与、その他の待遇のそれぞれについて不利な取扱いを禁止

    「派遣先の労働者との均等・均衡待遇」又は「一定の要件を満たす労使協定による待遇」のいずれかの確保を義務化

    第31条 内容説明の義務

    第30条の均等+均衡待遇に関する説明義務を追記

    説明を求めた労働者の不利益な取り扱いを禁止

2020年4月1日
※中小企業における適用も同じ

3分間でわかる 同一労働同一賃金入門

同一労働同一賃金に関する法改正の概要

働き方改革関連法が、2018年6月に成立しました。

このうち、「正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の禁止」が、いわゆる「同一労働同一賃金」の内容です。非正規雇用労働者とは、パート・アルバイト、契約社員、定年再雇用者、派遣社員といった雇用形態で働く人たちのことです。

今回の同一労働同一賃金に関する法改正は、「労働契約法」「パートタイム労働法」「労働者派遣法」という3つの法律について行われています。

現在の労働契約法第20条には、このように書かれてあります。

労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

契約社員などの期間の定めがある有期社員に対し、業務内容・責任や配置条件を考慮して、正社員との間で不合理な労働条件にしてはならない、と明記されています。

そしてパートタイム労働者に対しては、さらに厳しいルールが存在しています。

パートタイム労働法第9条(差別的取扱いの禁止)
事業主は、職務の内容が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるものについては、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。

仕事の内容や配置条件が正社員と同じであれば、パート(短時間労働者)だからといって、賃金などの待遇を変えてはならない、と定めています。

今回の改正では、労働契約法20条をパートタイム労働法に「統合」し、強化しました。これにより法律の名称も、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に変わります。

この対象には、契約社員やパート社員だけでなく、定年後に同じ会社に嘱託社員などのかたちで再雇用される人も、含まれます。

つまり、正社員ではない非正規社員をひとまとめにして「正社員と差別的な区別をしてはならない」と決めたのです。

大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月適用

今回の法改正により、大企業は2020年4月1日までに、同一労働同一賃金を導入しなければなりません。中小企業は1年間の猶予期間があり、2021年4月1日までに導入することになります。

この場合の「中小企業」の定義は、業種によって異なり、以下のとおりです。

中小企業の定義(これ以外は、大企業)
業種 資本金(または出資金) または 常時雇用労働者数
小売・飲食業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

「その他の業種」では、「資本金3億円以下」または「常時雇用労働者数300人以下」です。どちらかの条件を満たせば中小企業と認定されます。ここには、メーカーや建設業、物流業など多くの業種が含まれます。たとえば、資本金が5億円あっても、常時雇用労働者が200人であれば中小企業となります。

法改正のポイント

今回の「法改正」は、次の3つの柱からなっています。

  • 不合理な待遇差を解消するための規定の整備
  • 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
  • 行政による履行確保措置および裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の整備

<不合理な待遇差を解消するための規定の整備>とは、1つの企業内で、正社員との比較において、非正規社員にとって不合理な待遇を行ってはならない、ということを示しています。

<労働者に対する待遇に関する説明義務の強化>とは、非正規社員から「私の給料が正社員の給料と差があるのはなぜですか」「なぜ正社員に支給されている手当がパートや契約社員には出ないのですか」などと尋ねられたら、会社側はきちんと回答しなければならない、という内容です。

人事担当者は、しっかりと説明できる態勢を整えておく必要があります。

<行政による履行確保措置および裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の整備>により、非正規社員が差別的な待遇を受けたとき、法的手段に訴えやすくなります。

行政による履行確保措置とは、企業などの事業主に対して報告徴収、助言、指導を行うことです。労働基準監督署が企業に対して調査しやすくなります。

裁判外紛争解決手続き(行政ADR)とは、訴訟ではない方法で労使間の紛争を解決していく方法です。「ジャッジ」するのは裁判所ではなく都道府県労働局ですので、訴訟ほど費用はかかりませんし、短期間で決着します。

これまでは、契約社員やパート社員が差別的な待遇であったとしても、裁判に訴えることはハードルが高く、訴訟に至らないケースがほとんどでした。しかし、履行確保措置と行政ADRの整備によってそのハードルは引き下げられますので、非正規社員からすると「訴えやすくなる」わけです。

均衡待遇と均等待遇

今回の法改正において「同一労働同一賃金を導入する」とは、正社員と非正規社員を均等あるいは均衡に待遇する、ということを示しています。

均等待遇とは、差別的取扱いを禁止することです。正社員と職務内容や配置条件が全く同じ場合、賃金などの労働条件(待遇)を同じにしなければならない、ということです。言い換えれば、「同一労働なら同一待遇にしなさい」となります。

一方、均衡待遇とは、不合理な待遇差を禁止することです。正社員と非正規社員の間の①職務内容、②職務内容と配置の変更範囲、③その他の事情――の3つの相違を考慮して、待遇や賃金などの労働条件を決めなければなりません。言い換えれば、「同一労働でないとしても、差別的ではないバランスのとれた待遇にしなさい」となります。

均衡待遇がなされているかどうかは、「それぞれの賃金・待遇項目」ごとにチェックされることがポイントです。

たとえば、仮に契約社員の年収水準が「正社員の8割程度」であることは、仕事内容などから判断して妥当とします。しかし、その契約社員に対し、正社員に支給している特定の手当や賞与を支給していないと、「均衡待遇ではない」となるかもしれません。

経営者や人事担当者は、手当や賞与、福利厚生などの待遇項目の1つ1つが、同一賃金判断の対象となることに、注意してください。

派遣労働者の同一労働同一賃金

今回の改正では、派遣労働者にも同一労働同一賃金が適用されます。

しかし、直接雇用の契約社員やパート社員と大きく異なる点があります。それは、派遣会社(派遣元事業主)は、「派遣先労働者との均等・均衡方式」または「労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式」のいずれかを採用することができる点です。

本来、派遣労働者にとって同一労働同一賃金の比較対象となるのは、派遣会社の正社員ではなく、派遣先の正社員となります。派遣先企業で、働いているからです。これが「派遣先労働者との均等・均衡方式」ということです。派遣先労働者と派遣労働者の均等・均衡を図る方法ですが、さまざまな要因から見て、こちらは実現のハードルが高いでしょう。

一方の「労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式」は、派遣会社が、労働者(自社の派遣社員たち)の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数代表者と、賃金などの待遇について労使協定を締結する方法です。こちらの方式であれば、A社に派遣された派遣社員の賃金とB社に派遣された派遣社員の賃金を、同額にすることができます。

したがってほとんどの派遣会社は、こちらの、労使協定による待遇決定方式を採用すると予測されます。

これらは、派遣会社が対応すべきことであって、派遣社員を受け入れている企業(派遣先企業)が対応することではありません。

ただし、派遣社員を受け入れている企業にとっては、派遣会社に支払う派遣料が上昇する可能性が高くなります。そのような意味では、派遣先の会社も無関係ではありません。派遣先企業の人事担当者は、派遣会社から値上げを要請されるかもしれませんので、人件費コストへの影響は考えておく必要があるでしょう。

「同一労働」かどうかはどのように判断される?

同じ職種(営業職や製造職など)というだけでなく、役割責任の重さや難易度、必要能力、期待成果など、合理的な違いがあれば、「同一労働」ではないということになります。

また、今回の法律では、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情も、判断要素になるとしています。職務内容・配置の変更範囲とは、転勤の有無や職種間異動、職場配置の範囲を指しています。たとえば、「正社員は転勤があるけど、非正規社員は転勤がない」という場合には、「同一労働」ではないということになります。しかし、正社員の中にも、勤務地限定社員が存在する場合には、「転勤」に関する条件は同じということになるでしょう。また、本社以外に転勤がない中小・零細企業なども、同様です。

その他の事情、というのが分かりづらいですが、たとえば「定年後再雇用者」であることは、「その他の事情」に当たるという裁判所の判決例も出ています。

ただし、同一労働かどうかのジャッジは、非常に難解な判断ポイントであり、法律が施行された後も、さまざまな議論が出てくると考えられます。

同一労働同一賃金に関する判例

実際に、均等待遇・均衡待遇となっているかどうかは、最終的には裁判など司法判断に委ねられています。

そこで参考になるのが、これまで同一労働同一賃金に関連して、裁判所が下した裁判例です。

(1)「定年後の給与水準引き下げ」に対する最高裁判決

この裁判では、正社員のトラック運転手の賃金と、定年後再雇用されたトラック運転手の賃金の格差が争点になりました。トラック運転手の仕事は、定年前も定年後もほとんど同じです。

したがって、同一労働同一賃金の考え方からすると、定年前後で「賃金格差が生じるのはおかしい」という論理になりそうです。しかし、地裁と最高裁は異なる判断を下しました。

まずは、東京地裁の判決内容をみてみましょう。

  • 長澤運輸、定年再雇用後に同じ業務での賃金格差は「違法」
  • 東京地裁2016年5月13日 判決のポイント

東京地裁の判断は明確で、定年前と同じ仕事を定年再雇用者にさせているのだから、給与水準を下げるのは不合理だ、としています。

ポイントは、定年再雇用者の年収が「2~3割下がった」点です。企業の経営者や人事担当者からすると、正社員と定年再雇用者に2~3割の差をつけることは「当然のこと」と感じるのではないでしょうか。

ところが東京地裁は、コスト圧縮の手段として、定年再雇用者の年収を2~3割下げることは正当ではないと考えました。

さて、この訴訟は高裁・最高裁まで進み、最高裁は東京地裁とは異なる判断を下しています。最高裁の判断なので大きく報道されました。

  • 長澤運輸、最高裁は定年再雇用後の待遇格差は「不合理でない」
  • 最高裁2018年6月1日 判決のポイント

まず最高裁は「定年後の再雇用で、正社員との待遇格差が出ることは不合理ではない」という前提を示しています。ただ最高裁は同時に、待遇格差の問題は「個別に検討」するとしました。

長澤運輸の事案について最高裁は、定年前後で「仕事の内容は変わらない」としながらも、「給与、手当の一部、賞与」を定年再雇用者に支給しないのは、不合理ではないとしています。同一労働であったとしても、定年前後でこの程度の年収差は、容認できる格差と判断したのです。

(2) 「各種手当」に対する最高裁判決

最高裁判決では、長澤運輸の事案だけでなく、別の物流会社(ハマキョウレックス)の事案についても、同じ日に判示しています。

  • ハマキョウレックス、手当格差は「不合理」
  • 最高裁2018年6月1日 判決のポイント

ハマキョウレックスについては、定年再雇用者ではなく、契約社員の運転手が起こした裁判です。

「通勤手当」「給食手当」「無事故手当」「作業手当」「皆勤手当」は、非正規社員((この事案では契約社員)にも支払うのが妥当であると判示しています。

ハマキョウレックスの事案では、前提は「職務:同じ」「職務と配置の変更:異なる」「その他の事情:なし」となっています。

最高裁は無事故手当、作業手当、解禁手当、給食手当、通勤手当について、正社員と非正規社員(この場合は契約社員)に差を設けるのは不合理であると認定しています。これらの手当の支給原因が、契約社員にも発生し得るからです。

(3) 「契約社員に扶養手当不支給」は合理的か

正社員に支給している家族手当(扶養手当)や住居手当、年末年始勤務手当を、契約社員に支給しなかったのは不合理な労働条件の相違に当たる、とした判例を紹介します。

日本郵便株式会社の契約社員が、正社員との待遇格差を訴えた裁判です。

  • 日本郵便、契約社員への扶養手当不支給は「不合理」
  • 大阪地裁2018年2月21日 判決のポイント

契約社員が「正社員と同じ仕事をしているのに、正社員と同じ手当が出ないのはおかしい」と訴えたわけです。

大阪地裁は重要な判断を示しました。それは、扶養手当(家族手当)は職務内容の違いに左右されない手当であり、家族を養う負担は契約社員も正社員も同じである、という見解です。

しかし、訴訟は、大阪地裁判決で決着がつかず、大阪高裁に移りました。

  • 日本郵便、契約社員への扶養手当不支給は「容認」
  • 大阪高裁2019年1月24日 判決のポイント

大阪高裁は、扶養手当(家族手当)を正社員にだけ支給し、契約社員に支給しないことは違法ではないと認定したのです。その根拠は、契約社員は短期雇用が前提だからというものでした。短期雇用者と正社員との間に扶養手当の違いを設けることは不合理ではない、としたのです。

大阪地裁と大阪高裁は、真逆の判断をしているように映ります。

(4) 「アルバイトにも賞与を支給すべき」と全国初の判断

この判例は、アルバイトにも賞与を支給すべきであると、全国で初めて判断し、注目を集めました。

  • 大阪医科薬科大学、アルバイトへの賞与不支給は「違法」
  • 大阪高裁2019年2月15日 判決のポイント

アルバイトが、正社員や契約社員に支給されている賞与が、自分たちに支給されないのは「おかしい」と訴えた裁判です。

大阪高裁が、アルバイトにも賞与を支給すべきであると判断した根拠は次のとおりです。

  • 賞与の支給が年齢や成績に連動してなく、就労したこと自体に対する対価であった
  • 訴えを起こしたアルバイトは、フルタイムで働いていた
  • フルタイムで就労しているアルバイトに、就労したこと自体に対する対価である賞与を支給しないのは不合理
  • 契約職員には、正職員の賞与の約8割の賞与が支給されていた

さらに大阪高裁は、これだけの条件がそろったときは、フルタイムのアルバイトには、正職員の賞与の6割以上の賞与を支給すべきであると判断しました。

裁判所が、「6割」という具体的な金額の割合まで示したのです。

(5) 「退職金不支給」でも全国初の判断

退職金を契約社員に支払わなかったケースで、東京高裁が違法であるとしました。これも全国初の判断です。

  • メトロコマース、長年勤務の契約社員の退職金不支給は「違法」
  • 東京高裁2019年2月20日 判決のポイント

地下鉄を運営している東京メトロ(東京地下鉄株式会社)の子会社である株式会社メトロコマースの契約社員と元契約社員が起こした裁判です。同社は地下鉄駅の売店などを運営しています。

東京高裁は、契約社員たちの勤務期間が「10年前後」と長期に及んでいることに注目しています。さらにメトロコマースで正社員に支給されている退職金が、長年の勤務に対する功労報償の性格を有することにも言及しています。

すなわち東京高裁は、契約社員の勤務期間が「功労報償を受ける長期間勤務に該当するかどうか」を退職金の支給・不支給の判断基準にしたのです。そのうえで、原告4人のうち2人について、「退職金を一切支給されないことは不合理」と判断しました。

そしてもうひとつの注目点は、退職金の割合です。東京高裁は、契約社員に支払われるべき退職金は、正社員の「少なくとも25%」としました。

しかし、(3)~(5)の重要裁判は、いずれも高裁判決までとなっています。今後、最高裁でどのような判断が下されるかによって、企業対応の必要性が異なってくるでしょう。

ガイドラインに沿った基本給、賞与、手当の改定

厚生労働省が2018年12月28日、「同一労働同一賃金ガイドライン」(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)を、発表しました。

これは2016年12月に発表された「同一労働同一賃金ガイドライン案」を修正・加筆したもので、正式なガイドラインという位置づけになっています。

そこで、人事担当者はこのガイドラインをもとに、自社の賃金ルールを改定していくことになります。

(1) ガイドラインに沿った基本給の見直し

基本給については、「同一労働同一賃金となるよう職務給の考え方を導入しなさい」といったことは書かれていません。むしろ、給与体系については、各社ごとに決めてもらって結構。ただし、正社員と非正規社員の不合理な格差は認められません、という主旨になっています。

また、ガイドラインでは、「正社員に職能給を導入するのであれば、非正規社員にも職能給を導入しなさい」とはなっていません。たとえば、非正規社員の賃金を、地域の相場で決めている企業は多いですが、その制度を改めることまでは求められていません。

ガイドラインが言っているは、「正社員の賃金と非正規社員の賃金のどちらにも職能給を導入しているなら、同じ運用をするように」ということなのです。したがって「正社員に職能給を導入していても、非正規社員に職能給を導入していないのなら、同じ運用にしなくてもよい」と読み取ることができます。

「では現段階において、正社員の基本給のルールと非正規社員の基本給のルールが異なっている場合は、何も是正する必要がないのか」と疑問に思うことでしょう。むしろ、基本給のルールを正社員と非正規社員で別に設けている会社のほうが多いはずです。

ガイドラインでは、「注」のなかで、その疑問に答えています。

この部分を平易な言葉で要約すると「正社員と非正規社員の基本給のルールが違うときは、従業員たちにしっかり説明できるようにしておくこと」となります。

そしてその説明方法は、単に「正社員は将来の期待が大きいから、非正規社員とは異なるルールで賃金を支給している」では足りないと注意しています。

正社員と非正規社員の基本給ルールに差異を設けるのであれば、客観的な実態や具体的な実態に照らしてみて、合理的でなければなりません。

人事担当者は「正社員の給与制度と、非正規社員の給与制度が異なる理由」を説明できるようにしておく必要があります。

企業の対応策としては、次の3の選択肢が考えられます。

基本給についての対応策
対応策1 有期社員・パート社員を正社員の等級制度・基本給制度に当てはめる。
ただし、転勤の有無、職場配置・職種 転換の有無、勤務可能な労働時間による基本給差は設定する。
対応策2 有期社員・パート社員も含めた共通の等級制度・基本給制度を新たに設計し、全社員に適用する。
正社員の制度も見直す。条件差による基本給差は、対応策1と同じ。
対応策3 正社員との仕事区分を明確にすることで、現状の賃金差や給与制度の違いを維持する。
(2) ガイドラインに沿った賞与の見直し

賞与制度の変更は、今回の同一労働同一賃金の導入で、人件費に最も大きなインパクトを与えると考えられます。

パート・アルバイトに賞与を支給していない企業や、寸志程度だけ支給という会社も少なくないでしょう。小売業や飲食店は非正規社員が多いので、たとえば新たに社員並みの賞与水準を支給することになると、経営が成り立たなくのではないでしょうか。

ガイドラインでは、「会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給する賞与制度」であれば、正社員と非正規社員の貢献度が同じなら同額、貢献度が異なるなら貢献度に応じた差をつけて支給しなければならない、としています。

多くの会社が、賞与は業績貢献による支給という意味合いをもっているのではないでしょうか。

一方、「同一労働同一賃金に関する判例」として紹介した、大阪医科薬科大学の裁判では、「従業員の年齢や成績に連動しておらず、就労したこと自体に対する賞与制度」であったことが、アルバイトへの支給を命じる根拠となっていました。ガイドラインとこの判例を併せてみると、業績配分の賞与でも、一律支給の賞与でも、非正規社員に支給しなくてもよいという理由が見出しづらくなります。

したがって、正社員に賞与を支払っている企業が、契約社員やパート社員に一切賞与を支払わないと、その格差には合理性がないと認定される可能性が高まっていると考えられます。

これまで非正規社員に賞与を支給していなかった企業は、大きな決断を迫られることになります。

企業が様子見をしているのは、賞与関連の最高裁判決が少ないことも関係しています。しかしどの企業も早晩、対応策を取ることが求められます。そこで、次の3つの対応策が考えられます。

賞与についての対応策
対応策1 有期社員・パート社員に対しても、正社員と同様の賞与制度を導入する。
対応策2 有期社員・パート社員の賞与を、一定水準引き上げる。
対応策3 賞与については、判例の動向などを踏まえて対応を検討する。
(3) ガイドラインに沿った手当、福利厚生、教育訓練の見直し
  • 役職手当

契約社員やパート社員を、役職者に就任させる機会はそう多くないはずです。したがって、役職手当について「非正規社員にも役職手当を支給する」と改定しても、賃金の総額に与えるインパクトは大きくありません。

  • 特殊作業手当と特殊勤務手当

高所作業や暑熱環境下での作業などを行った場合の特殊作業手当や、交替勤務に対する特殊勤務手当を正社員に支給している会社は、非正規社員にも同じ手当を支給しなければならない、としています。

危険作業や交替勤務の負荷は、正社員も非正規社員も同等なので、時給に加算されている場合などを除き、これら手当の非正規社員不適用は正当化しづらいのではないでしょうか。

  • 精皆勤手当、時間外・深夜・休日手当

精皆勤手当についてガイドラインでは、「通常の労働者(正社員)と業務内容が同一の場合」、短時間・有期雇用労働者(非正規社員)にも支給しなければならない、としています。

時間外・深夜・休日手当について問題になるのは、会社の規定で労働基準法の定めより高い割増率を正社員に支払っているケースです。たとえば、労基法では時間外労働の割増率は25%ですが、社内規定で35%にしていたとします。この場合、非正規社員が時間外労働を行ったら25%増ではなく35%増にすることを求めています。

  • 通勤手当、出張旅費、食事手当、単身赴任手当、地域手当

通勤手当を非正規社員に支給しない会社は少数と思いますが、これは支給するようにしましょう。出張旅費も同様ですが、影響は限られます。

食事手当についても、格差は解消した方がよいでしょう。

単身赴任手当については、非正規社員が単身赴任するケースは少ないので、正社員と同条件を適用しても、影響は限定的です。

地域手当は、少し考えなければなりません。たとえば従来から、東京本社の非正規社員の時給を1,200円とし、関西支社の非正規社員の時給を1,000円としている場合、物価水準を考慮して東京本社の非正規社員の時給を高くしていれば、地域手当を含んだ時給と考えることができます。つまりこのケースでは、正社員のみ地域手当を支給していても、改めて非正規社員に地域手当を支払う必要はない、と言えそうです。ただし、東京本社の時給を、基本時給1,000円+地域時給200円=1,200円、としておく方が意味合いは明快となるでしょう。

  • 福利厚生

食堂や休憩室などの福利厚生施設の利用について、正社員と非正規社員に差を設けている企業は少ないでしょう。もし差を設けているのであれば、是正した方がよいでしょう。

一方、慶弔休暇や病気休職については、正社員と非正規社員に差を設けている企業は、少なくありません。たとえば、身内が亡くなったとき、正社員は4日休めるが非正規社員は2日しか休めない、といった規定は改善することをおすすめします。

  • 教育訓練

ガイドラインでは、正社員と非正規社員に同じ仕事をさせているのであれば、同じ教育訓練を実施するよう求めています。

仕事が異なっているとしても、正社員だけに教育訓練を行っていて、非正規社員に何もしていない企業があれば、非正規社員に対しても何かしらの教育訓練を行ったほうがよいでしょう。

ガイドラインが示している手当、福利厚生、教育訓練については、正社員の制度に非正規社員も合わせていくことになるでしょう。ただし、非正規社員に通勤手当を支給していない会社などを除けば、手当、福利厚生、教育訓練を是正しても、人件費への影響はさほど大きくないと考えられます。

企業にとってより大きな問題は、ガイドラインでほとんど触れられていない、家族手当、住宅手当、退職金です。この3つの項目を、すべて非正規社員に支給し、しかもその金額を正社員並みにすると人件費コストはかなり増大します。

そこで企業は、次の対応策1、2、3の中から、方針を選択することになります。

手当、福利厚生についての対応策
対応策1 通勤手当や食事手当、休暇など業務内容の違いに左右されない手当・福利厚生については、正社員と支給額や条件を統一する。
ただし勤務時間による金額差は設ける。
対応策2 ガイドライン記載の手当、福利厚生全般について、正社員と支給額を統一する。
ただし勤務時間による金額差は設ける。
対応策3 家族手当、住宅手当、退職金についても、正社員と非正規社員を次の①または②の方法で統一する。
①正社員に合わせる
②廃止や支給額縮小も含め、新しい制度をつくって統合する
企業の対応まとめ

全体のまとめとして、同一労働同一賃金の導入が迫られている企業の経営者や人事担当者がすべきことを、列挙してみます。

  • 今回の法改正は、あくまで一企業内の正社員・非正規社員の不合理な待遇格差是正である。大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から適用されるので、計画的に賃金などの待遇を見直す。
  • 契約社員、パート・アルバイト社員、定年再雇用社員は、ガイドラインや判例を参考に、必要な見直しを進める。
  • 派遣社員の同一労働同一賃金については、対応を派遣会社に任せてよいが、派遣料アップには備えておく。
  • 非正規社員の基本給は、正社員と制度を合わせるか、制度が異なる理由を説明できる  ようにしておく。
  • 非正規社員の基本給・賞与・退職金については、今後の裁判結果を眺めながら対応していくことが主流になる。
  • ガイドラインに明記されている非正規社員の手当、福利厚生については早期に対応を決めておく
  • 人件費へのインパクトが大きい家族手当、住宅手当はガイドラインにほとんど記載されていないが、それでも対応を検討しなければならない。正社員の制度自体も検討課題となってくる。
  • 収益や人手不足といった経営状況、判例やガイドラインなどの法律関係、さらに他社事例を基に、正社員の賃金制度も含めた自社の対応を行う。

本サイト 同一労働同一賃金.comでは、弊社のコンサルティング事例や同一労働同一賃金に基づく処遇改定方針書をご紹介しています。これらを参考にし、自社にとって必要な人事制度改善を行ってください。