同一労働同一賃金に関する情報提供サイト

同一労働同一賃金に関する最新情報やお役立ち情報を提供しています0120-370-772


MENU

情報の部屋

同一労働同一賃金.com  >  情報の部屋  >  同一労働同一賃金に関連した最近の裁判例  >  「退職金不支給」でも全国初の判断

「退職金不支給」でも全国初の判断

2019/07/09

メトロコマース、長年勤務の契約社員の退職金不支給は「違法」
東京高裁2019年2月20日 判決のポイント

<裁判の概要>
東京メトロ子会社であるメトロコマースで、売店勤務の契約社員として勤務していた4人が、正社員との待遇格差は不当として訴えた。

<判決のポイント>
・長期間勤務した契約社員に退職金の支給を全く認めないのは不合理として、4人のうち10年程度勤務していた2人に対する退職金の支払いを命じた。

・退職金水準については、正社員と同じ基準で算定した額の少なくとも25%とした。

・また、住宅手当、勤続10年褒賞、早出残業手当の割増率についても、正社員との格差は不合理と判断した。

・一方、正社員とは配置転換の有無などの労働条件が異なるとして、賃金や賞与などの格差は容認した。

 

地下鉄を運営している東京メトロ(東京地下鉄株式会社)の子会社である株式会社メトロコマースの契約社員と元契約社員が起こした裁判です。同社は地下鉄駅の売店などを運営しています。
この判決でも、重大な判断が示されました。退職金を契約社員に支払わなかったケースで、東京高裁が違法であるとしたのです。これも全国初の判断です。

この判例では、退職金も同一労働同一賃金の対象になりうることが示された点も重要ですが、企業の経営者や人事担当の方々は「判決理由」に注目してください。
東京高裁は、契約社員たちの勤務期間が「10年前後」と長期に及んでいることに注目しました。メトロコマースで正社員に支給されている退職金が、長年の勤務に対する功労報償の性格を有することに言及しています。
すなわち東京高裁は、契約社員の勤務期間が「功労報償を受ける長期間勤務に該当するかどうか」を退職金の支給・不支給の判断基準にしたのです。そのうえで、原告4人のうち2人について、「退職金を一切支給されないことは不合理」と判断しました。
そしてもうひとつの注目点は、退職金の割合です。東京高裁は、契約社員に支払われるべき退職金は、正社員の「少なくとも25%」としました。したがってこの判決は、契約社員に支給すべき退職金は、正社員よりかなり少ない額でよい、ともいっているわけです。

さらにこの判決では「住宅手当」「勤続10年褒賞」「早出残業手当の割増率」についても、正社員との格差は違法と判断しています。
この判決は2019年2月に出ています。この時期に全国初の判断を下しているということは、裁判所も同一労働同一賃金を意識しているとみてよいでしょう。
人事担当者にとっては、「退職金くらい、正社員と非正規社員に差があっても当然だ」という考えが通用しなくなるかもしれません。