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「契約社員にも、家族手当・住宅手当を支給すべきか」注目の裁判

2019/06/28

日本郵便、契約社員への扶養手当不支給は「不合理」
大阪地裁2018年2月21日 判決のポイント

<裁判の概要>
集配・出荷業務などの契約社員が、正社員と同じ仕事内容にもかかわらず、手当など労働条件の格差は違法として訴えた。

<判決のポイント>
・正社員と職務内容や責任に差はあるが、扶養手当、住居手当、年末年始の勤務手当の不支給は不合理な労働条件の相違に当たる。

・扶養手当については生活保障給の性質があり、職務内容にかかわらず、家族を扶養する負担は正社員と変わらず、契約社員に支給されないのは不合理とした。

・住居手当は、転居を伴う転勤がない一般職の正社員にも支給されており、契約社員に支給されないのは不合理とした。

 

日本郵便株式会社の契約社員が、正社員との待遇格差を訴えた裁判。契約社員が「正社員と同じ仕事をしているのに、正社員と同じ手当が出ないのはおかしい」と訴えました。

大阪地裁は重要な判断を示しました。それは、扶養手当(家族手当)は職務内容の違いに左右されない手当であり、家族を養う負担は契約社員も正社員も同じである、という見解です。

また、住居手当(住宅手当)については、地域限定勤務の一般職の正社員にも支給されていることに注目しました。契約社員も同じ境遇にあるため、住居手当を支給すべきとしたのです。

しかし、この訴訟は、大阪地裁判決で決着がつかず、大阪高裁に移りました。

大阪高裁は20191月に判決を下し、大阪地裁と同じように一部の手当に違法な格差を認定しました。ただし、その論拠は大阪地裁とは大きく異なります。

判決内容のポイントを、見てみましょう。

 

日本郵便、契約社員への扶養手当不支給は「容認」
大阪高裁2019年1月24日 判決のポイント

<裁判の概要>
集配・出荷業務などの契約社員が、正社員と同じ仕事内容にもかかわらず、手当など労働条件の格差は違法として訴えた裁判の高裁判決。

<判決のポイント>
・一審の大阪地裁が違法と判断した扶養手当の格差について、「長期雇用を前提として基本給を補完する生活手当」であり、「契約社員は原則として短期雇用が前提」のため容認する逆転判決を出した。

・また、年末年始勤務手当などについては、契約社員の中でも雇用期間が5年超の者には支給すべき、という対象者基準を新たに示した。

 

大阪高裁は、扶養手当(家族手当)を正社員にだけ支給し、契約社員に支給しないことは違法ではないと認定したのです。その根拠は、契約社員は短期雇用が前提だからというものでした。短期雇用者と正社員との間に扶養手当の違いを設けることは不合理ではない、としたのです。

大阪高裁はさらに、雇用期間が5年超の契約社員には年末年始勤務手当などを支給すべきであるとしました。新たに「5年ルール」を提示したのです。

これは、有期労働契約を結んでいる労働者が通算で5年超雇用された場合、労働者の申し込みによって期間の定めがない無期労働契約に転換できる、という労働契約法の規定を根拠にしています。

無期労働契約に転換した場合、正社員との違いを設ける根拠はなく、契約社員に年末年始勤務手当を支給しないのは不合理だと判断したのです。

しかし、この点については、大阪高裁が「雇用期間5年以下の契約社員には、年末年始勤務手当不支給でも不合理とはいえないと認定した」と解釈することができます。

大阪地裁は扶養手当について、家族を養う負担は契約社員も正社員も同じだから両者に差を設けるのは違法であると判断しているので、大阪地裁と大阪高裁は、180度異なる真逆の判断をしているように映ります。

最高裁の判断が、待たれます。