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同一労働同一賃金に関する企業の取り組みアンケート調査
自由記述に対する人事戦略研究所 所長 一言コメント③

2018年03月27日

 株式会社新経営サービス 人事戦略研究所では、人事情報サイト「日本の人事部」の利用者を対象に「同一労働同一賃金に関する企業の取り組み実態」について調査を行い、総務・人事部門を中心に248名からの回答を得ました。
 本記事では、その調査結果内の自由記述に対して、当研究所所長山口によるコメントを掲載します。※第3回は“同一労働同一賃金の法制化に反対の立場”の方の意見へのコメントです。

第3回<反対の立場からの意見>

  • もともと日本企業における賃金決定の基準は労働の価値ではない。同一労働の観点からいえば、正規社員と非正規社員の賃金格差よりも、正規社員間格差の方が大きい。労使の対等かつ自由な契約に任せるべきである。 (従業員数750名、食品製造、総務・人事部門、役員クラス)

    山口コメント ご指摘のように、まずは正社員の中が全く同一労働同一賃金になっていない点が、問題を複雑にしています。給与制度自体は、成果主義でも、年功賃金でも、その会社が選択すべきテーマです。ただし、性別、国籍、信条などの属性による不公正な処遇決定を禁じることは、国の役割といえます。今回は、これらの属性に、雇用形態(正規か非正規か)が加えられたと、捉えるのが妥当と考えます。

  • 個々人の生活パターンがあり、非正規職員の賞与はない代替として、残業もほとんどなく『「パート」だから』許されるとの暗黙の了解がある、責任が重くなる必要もないと割り切っている。非正規職員をこの新制度に組み込むと、本人とは不本意な労働契約を結ぶ必要がある。一方、業種(特に製造業、サービス業等)によっては「高年齢非正規職員」が社会的問題になっているので、「正職員と非正規職員のどこが違うのか?」と不満を持っている人には朗報である。「働き方改革」は、「多様な働き方を認める」「将来の労働人口減少に対応する」という大義名分があるので、一方的に同一労働同一賃金ではなく、個々人の要望に添うようにする必要があると考える。 (従業員数200名、医療福祉関連、総務・人事部門、課長クラス)

    山口コメント 雇用形態によって明らかに業務責任や負荷の異なる場合には、一定の賃金格差を設けることも妥当でしょう。他方、会社によっては、契約社員やパート社員が正社員と同等か、むしろ上回るほどの業務責任や負荷を担っているケースもあります。後者については、非正規社員だから待遇が低くても仕方ない、という判断は通らなくなると思われます。

  • 多くの日本の賃金体系は、職務給のような同一労働同一賃金を想定していないため、正社員間でも給与にばらつきがある。それを一律に正規・非正規にかかわらず同一にしようとする法案にそもそも無理がある。 (従業員数200名、その他業種、総務・人事部門、役員)

    山口コメント 本当に同一労働同一賃金を実現しようとするのであれば、まずは正社員の賃金体系を是正する必要があります。ご意見のように、そこにメスを入れず、非正規社員の処遇改善だけで解決するのは無理があります。

  • 賃金決定は企業側の自由であり、処遇に於いて不利な企業は市場原理の中で淘汰されるべきであると考える。したがって、国が関与しなければならないのは国民の健康で安全な最低限の生活を守るための施策であるべきで、それ以上を望むのであれば競争原理を働かせないとどこかで無理が来る。 (従業員数7,800名、保険、総務・人事部門、主任・係長クラス)

    山口コメント 私の意見としては、非正規社員の待遇改善が主目的であるなら、同一労働同一賃金ではなく、最低賃金の大幅引き上げが最も有効と考えます。アメリカの主要都市では、次々と最低賃金を15ドル(110円換算で、1,650円)程度に引き上げる決定がなされています。

  • 特に男女差を無くす等という意味での同一労働同一賃金という考え方には大いに賛成するところですが、法制化には反対です。欧米が「仕事」基準の「職務給」が標準的であるのに対し、日本では「職能給」など「人」基準の賃金体系を採っている会社が多く、また、日本の企業は、正社員の終身雇用の慣行の中で、正社員の時間外勤務や人事異動や出向、昨今の派遣社員を中心とした非正規労働者の雇用調整などによって労働力を調整し、産業を発展させてきた経緯があるので、法制化によって国の力でその慣行を崩して一気に進めることが本当にいいのか疑問がある。 (従業員数900名、医療福祉関連、総務・人事部門、課長クラス)

    山口コメント 確かに、高度成長期までは、終身雇用、職種間ローテーションといった長期人材育成による企業成長が有効でした。また、バブル崩壊後の非正規社員拡大については、企業成長が減速する中、人件費コスト抑制による収益維持を図ってきた経緯があります。しかし、世界の中での日本企業の位置づけが低下してきており、これまでのやり方が限界に達していることも否めません。もちろん、法制化による改革が、日本企業成長につながるかどうかは、不透明ではありますが。

  • 非正規社員を使うメリットが無くなってしまうのでは無いかと思われるから。 (従業員数40名、建設・設備・プラント、総務・人事部門、主任・係長クラス)

    山口コメント 正に、「非正規社員という言葉をなくす」が政府のスローガンですので、企業にとって都合よく使える存在ではなくなります。