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コロナとディズニーランドと同一労働同一賃金

2020/04/25

新型コロナウイルス感染症拡大により、2月29日より休園している東京ディズニーリゾート。非正規雇用のキャストが要求していた休業に伴う手当の増額について、会社側が引上げを認めたようです。社内規定では、平均賃金の6割程度の補償額を、12割程度積み増すということです。

 

オリエンタルランド、休業補償額引き上げ、2万人対象(日本経済新聞2020/4/16)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58129850W0A410C2000000/

 

一方、次のような厳しいニュースも出てきました。大学生らの約6割が、アルバイトの収入が減少や皆無となっている。親の収入減とも相まって、大学退学を検討する学生が増えてきているというのです。

<新型コロナ>収入減 学生に深刻影響 13人に1人が退学検討 学生団体500人調査(東京新聞2020/4/23)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020042302000262.html

 

法的には、休業手当と休業補償は、異なるものです。労働基準法に、それぞれ条文があります。

(休業手当)

第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

 

(療養補償)

第七十五条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。

2 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。

(休業補償)

第七十六条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。

 

オリエンタルランドの記事の中では、「休業補償」となっていますが、休業の理由からは「休業手当」かもしれません。ただし、本論とは少し外れますので、この点はこれ以上触れません。

 

厚生労働省のWEBサイトに掲載されている「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html

 

においても、コロナ関連の休業については、以下のような回答となっています。

 

4 労働者を休ませる場合の措置(休業手当、特別休暇など)

<休業させる場合の留意点>

問1 新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

 

新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、欠勤中の賃金の取り扱いについては、労使で十分に話し合っていただき、労使が協力して、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。

なお、賃金の支払いの必要性の有無などについては、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案するべきですが、労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。

また、労働基準法においては、平均賃金の100分の60までを支払うことが義務付けられていますが、労働者がより安心して休暇を取得できる体制を整えていただくためには、就業規則等により各企業において、100分の60を超えて(例えば100分の100)を支払うことを定めていただくことが望ましいものです。この場合、支給要件に合致すれば、雇用調整助成金の支給対象になります。

(以下省略)

 

更に、非正規社員への適用についても、以下のように回答しています。

 

<パートタイム労働者等への適用について>

10 パートタイム労働者、派遣労働者、有期契約労働者などの方についても、休業手当の支払いや年次有給休暇の付与等は必要でしょうか。

 

労働基準法上の労働者であればパートタイム労働者、派遣労働者、有期契約労働者など、多様な働き方で働く方も含めて、休業手当の支払いや年次有給休暇付与が必要となっております。

労使で十分に話し合い、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。

なお、法定外の休暇制度や手当を設ける場合、非正規雇用であることのみを理由に、一律に対象から除外することは、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を目指して改正されたパートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法の規定(※)に違反する可能性があります。

※大企業と派遣会社は令和2年4月、中小企業は令和3年4月からの施行となっています。

 

ようやく、今回の本題である同一労働同一賃金法制としての「パートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法」が出てきました。パートタイム労働者には、学生アルバイトも含まれます。

 

さて、東京ディズニーリゾートで働くアルバイトには、平均賃金6割を超える手当が支給されるのに、その他の企業や店舗で働く学生アルバイトには、収入がゼロになって大学退学を考える人までいる現実。もちろん、オリエンタルランド以外でも、パート・アルバイトに対してキチンと休業手当を支給する会社もあります。しかし、学生アルバイトの多くは、シフトを減らされ、その分の時給が全額減らされているケースも少なくないようです。

 

では、なぜ労働基準法でも明記されている休業手当、支給されないケースが多いのでしょうか?

 

実は、この問題、結構複雑です。

 

まず、今回のコロナによる休業が、休業手当の対象になるのか。労働基準法26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合」となっており、「コロナは使用者の責に帰すべき事由か」という問題です。使用者の責任でなければ、休業手当を支給する義務はないことになりますが、これについては正社員も同様です。正社員に支給しているのに、アルバイトには不要という理由にはなりません。ただし、正社員は在宅で勤務を継続しているが、アルバイトは「会社の責任ではない休業」ということであれば、休業手当は不要という理屈かもしれません。

 

一方、採用時に交わす雇用契約書の問題もあるでしょう。通常、正社員は所定時間が、パート社員は週の勤務時間が記載されているはずです。ところが、学生アルバイトの場合、「〇時から〇時の間で、シフトにより決定」とか「週〇回、〇時~〇時。ただし、シフトにより変更」となっているケースが多いと思われます。学生側も、授業やクラブ活動、プライベートの予定があるため、柔軟な勤務を望むからです。

あるいは、街の個人店・零細店であれば、雇用契約書すら交わしていないケースもあるでしょう。

すると、「コロナで開店時間を減らすので、今月はシフトを減らしてもらわないといけない」あるいは「申し訳ないけど、今月はシフトゼロで」という現状。休業ではなく、あくまで「シフトによる決定・変更」という位置づけにして、休業手当が支払われないのかもしれません。

 

先ほどの厚生労働省のQ&Aを見ても、明快な回答はなく、あくまでお願いベースの表現となっています。

 

しかし現在、企業に対する雇用維持支援のため、雇用調整助成金のコロナ特例措置拡大が出されています。中小企業なら、「全社員(雇用保険被保険者のみ)の平均賃金×休業手当率」の最大90%が、助成金として支給されるというのです。1人1日当たりの上限金額(8,330円)はありますが、もともと時給水準の高くないアルバイトであれば、上限を超えるケースも少ないと思われます。これが活用できれば、たとえ時給の100%を休業手当として支給したとしても、会社の負担はかなり抑えられます。(詳しい計算方法などは、下記厚生労働省のWEBサイトを参照ください)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

 

たとえば、化粧品・健康食品製造・販売の株式会社ファンケルは、緊急事態宣言で休業中の直営店舗従業員全員に対する、 100%の「休業補償」を発表しました。

https://www.fancl.jp/news/pdf/20200423_tyokueitenpo.pdf

雇用調整助成金については、申請しても審査や支給までに時間がかかる、といった不満も聞かれますが、国も手続きの迅速化に取り組んでいます。存続の危機に瀕しているような企業はともかく、財務的な余力のある会社においては、このような時こそ、パート・アルバイトも含めた社員全体への姿勢が問われているのではないでしょうか。

  

同一労働同一賃金スタートと重なるように発生した、新型コロナウイルス感染症拡大。派遣切りやパート・アルバイトの貧窮が表面化することで、法改正の主旨である『雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保』が、更に遠のいていくように感じられます。

 

山口 俊一

執筆者

山口 俊一 | 株式会社新経営サービス 社長

人事コンサルティング、講演、執筆活動を中心に活躍している。職種別人事をベースにした独自の発想と企業の実状に沿った指導により全国からコンサルティング依頼を受け、定評を得ている。現在までに中小企業から一部上場企業まで、社以上のコンサルティング実績を持つ。主なコンサルティングテーマは人事評価・賃金制度の構築、組織運営など。