同一労働同一賃金に関する情報提供サイト

同一労働同一賃金に関する最新情報やお役立ち情報を提供しています0120-370-772


MENU

コラム

同一労働同一賃金.com  >  コラム  >  働き方改革関連法案、可決!これからどうなる?「同一労働同一賃金」 法改正のポイントとは

働き方改革関連法案、可決!これからどうなる?「同一労働同一賃金」 法改正のポイントとは

2018/06/30

働き方改革関連法が、629日に参議院で可決し、成立しました。この中で、正社員と非正規社員の待遇格差是正を目的とした、同一労働同一賃金に関する法改正も含まれています。

 

ただし、一見すると、今回の法改正自体は、さほど大きな変更には見えません。改正されたポイントを挙げると、

 

1.「労働契約法」第20条の規定を削除し、「パートタイム労働法」を「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に名称変更し、有期雇用労働者も含めた。

 

単に「有期雇用者」と「パートタイマー」を一括りにして、同じ法律のもとで規定しようとしただけと言えます。

 

2.比較対象を、「同一の事業所に雇用される」から「同一の雇用主に雇用される通常の労働者(正規雇用労働者)」に変更し、①職務内容・責任の程度、②職務内容・配置の変更範囲、その他の事情を考慮し、不合理と認められる待遇の相違を禁止。

 

これも、非正規社員が比較する正社員の対象を広げただけです。営業所や店舗内に同じ業務を行う正社員が居なくても、会社全体を見渡して対象者を選定できるというのです。

 

3.通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間・有期雇用労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、その賃金(通勤手当その他の厚生労働省令で定めるものを除く。)を決定するように努める。

 

正社員との均衡に考慮した賃金決定をうたっている部分ですが、「努める。」と努力義務に留まっています。

 

4.基本給、賞与、その他の待遇(手当・休日等)のそれぞれについて、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮する。

 

この部分は、意外と大きな影響を及ぼしそうです。待遇を全体的に捉えるのではなく、「基本給」や「賞与」「手当」「休日」といった各要素それぞれについて、性質や目的に沿った適切かどうかを判断しようというのです。この点が、最近の裁判に反映しているように思われます。基本給はどうか、この手当はどうか、というように、個別項目ごとにOKNOといった判断がなされているのです。

 

5.「労働者派遣法」の改正案では、「派遣先の労働者との均等・均衡方式」とされる。しかし、派遣先が変わるごとに賃金水準も変わってしまうと、派遣労働者の賃金水準が不安定になってしまうため、待遇決定の際に「派遣先の労働者との均等・均衡」か「派遣元の労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式」を選択。

 

派遣社員については、2つの方法を選択となっていますが、「派遣先の労働者との均等・均衡」の方は現実的ではありません。派遣先の正社員との待遇比較というのは、理屈は正しいかもしれませんが、派遣会社に正社員の賃金水準をオープンにするような会社はないでしょう。すると、「労使協定による待遇決定」となる訳ですが、「一定水準を満たす」が未だ不明です。厚生労働省が、職種ごとの賃金水準を示すようですが、果たしてどのような水準が出てくるかです。いずれにしても、企業にとって人材派遣を活用するためのコストは、引き上がっていくことが予想されます。

 

6.パートタイム労働者に加え有期雇用労働者に対しても、『雇入れ時の待遇の内容等に関する説明』、『労働者から求めがあった場合に、待遇を決定するに当たって考慮した事項に関する説明』を雇用主の義務とする。

 

入社時および本人から求められれば、企業側は待遇決定に至った根拠を示す必要が明記されています。説明できないような決め方はダメ、ということでしょう。

 

7.『行政による裁判外紛争解決手続の整備』として、「不合理な待遇の相違の禁止」に関する苦情及び紛争についても、行政から助言・指導・勧告の実施や、行政ADR(裁判外紛争解決手続)が利用できる。

 

非正規社員が裁判に訴えるのはハードルが高いので、行政が介入できるようにしたということです。実際に行政がどこまで強く介入するのか、現時点ではわかりません。

 

このように、今回の法整備に「同一労働同一賃金」という言葉は、どこにも出てきません。あくまで、1つの会社の中での正規・非正規の格差是正以外の要素は、全く含まれていません。内容的には「非正規社員の差別的待遇禁止法案」と名付ける方が妥当ではないでしょうか。

 

その一方で、「不合理な待遇」の具体的な事例についてはガイドラインで示すとして、すでに案は示されています。しかも、こちらの方は「同一労働同一賃金ガイドライン案」と、同一労働同一賃金という言葉が堂々と使われているのです。

 

また、個別案件に対する判断は、裁判など司法に委ねられることとなっています。すでに、日本郵便や長澤運輸、ハマキョウレックスのように、法改正を先取りしたような判決が出てきています。

 

働き方改革関連法案が成立したため、近々にガイドライン案の「案」が取れて、ガイドラインが出てくるでしょう。その際、「案」では記載が見送られた「家族手当」や「住宅手当」「退職金」が盛り込まれるのか。また、「基本給」や「賞与」についても、より突っ込んだ記述がなされるのか、に注目していただきたいと思います。

山口 俊一

執筆者

山口 俊一 | 株式会社新経営サービス 社長

人事コンサルティング、講演、執筆活動を中心に活躍している。職種別人事をベースにした独自の発想と企業の実状に沿った指導により全国からコンサルティング依頼を受け、定評を得ている。現在までに中小企業から一部上場企業まで、900社以上のコンサルティング実績を持つ。主なコンサルティングテーマは人事評価・賃金制度の構築、組織運営など。